その男、猛獣につき
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「舞花ちゃん、本当に彼氏いないの?」
散々からかわれた後、敦也さんの肩にテーピングの練習をさせて貰っていると、ふと敦也さんが私に訊ねた。
もう吹っ切れたはずのなのに、心のどこかで傷が少しだけ痛みを覚える。
「いないですよ。もう半年位……」
その言葉を発すると、頭の中で別れたはずなのに顔や声が鮮明によみがえってくる。
「なんで別れたの?」
「浮気してたんですよ。1つ上の先輩と付き合ってたんですけど、先輩、実習先の看護士と……。先輩が卒業と同時に私も捨てられました。」
面白くもない話。
そんな事分かりきっていたけれど、まだ言葉にするにはまだ時期尚早だったようで、心の傷がシクシクと疼きだした。
私は必死の強がりで、その傷を見せたくなくて、無理矢理口角をあげて笑顔を作る。