その男、猛獣につき
先生は私が委縮している様子を見て、もう一度大きなため息をつき、運転席のシートに身体を預ける。
私と先生の間を、ゆったりとした洋楽のバラードが流れ始める。
運転席の興梠先生を、覗き見ると、先生は右手で顔を覆っている。
先生…、疲れているのかなぁ。
「先生、勉強会でお疲れのところ、ご迷惑おかけして本当にすみませんでした」
私は小さくなって、頭を下げる。
「いや、有田は何も…、迷惑じゃないから」
先生は、私が頭を下げたことに戸惑っている様子で、言葉を選んでいる。
「うちの実習生に、手ぇ出されたら、たまったもんじゃないから」
「…心配してくれたんですか?」
「ん?まぁ、一応な」
ぶっきらぼうな口調で答える先生の言葉で、私の胸は嬉しさが胸いっぱいに広がっていく。