その男、猛獣につき
ぐううううううう
どうしてこうも私はタイミングが悪いのだろう。
さっきアイスを食べたばかりだというのに。
先生と少しだけなんだかいい雰囲気だったの言うのに、私のお腹の音は車内のBGMに合わせたように2人の間を駆け抜けていく。
穴があったら、入りたい。
顔中が真っ赤になったように熱を帯びた私は、俯くしかない。
「腹、減ったか?」
先生は笑いを必死で押さえながら、私に尋ねる。
それでもさっきまでの怒りモードの様子もなく、その言葉は柔らかだった。
「有田、そういえばさっきパスタが、って言ってたよな?」
「あの、その…敦也さんが近くに美味しいところがあるから連れて行ってくれるって…」
さっきの一件で、敦也さんの名前を口にすることすら恐怖でしかない。
けれど、先生は敦也さんの名前を出したことには触れずに、あぁ、あの店か。なんて思い出したかのように言いながら、車のエンジンをかける。