その男、猛獣につき

 敦也さんがおススメしていたパスタのお店に、私と先生は2人でディナーをした。

渡り蟹のトマトクリームパスタがとても美味しいと評判のお店。

先生の学生の頃の話やしげちゃん先生の話をしながら、美味しいパスタを食べ、あっという間に時間が過ぎてしまった。

 

2人きりだったのに、緊張もしなかった。それどころか、2人きりで楽しいと感じた。

 

「敦也さんに、美味しいお店紹介してもらったから、お礼言わなきゃいけないですね」

ふと出た私の余計な一言が今まで柔らかだった二人きりの空気をピリつかせる。

 

「有田、お前なぁ。俺が来なかったら今頃敦也に持ち帰られてたんだぞ」

 

先生はチラリと私を見て、冷たく睨む。

「すみません」

 

私は、肩をすくめ小さな声で呟く。

 

私たち2人の間には、また静かな沈黙が流れ始める。

 

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