その男、猛獣につき

 連れてこられたのは、ほとんど誰も通らない廊下のつきあたり。

「どういうつもりだ」

「どういうつもり…って、私の方が聞きたいです」



ミーティングの時まで、何もなかったかのように、先週までと同じように接してくれていた興梠先生。

それなのに、どうしてか今は不機嫌で、明らかに怒っているのが分かる。

 

先生、私の方が聞きたいです。

あのキスはどういうつもりなんですかって。

 

「有田は、何のために、実習している?」

「それは…」

思わず言葉に詰まる。



「恋愛しに来ていているのか?違うだろう」

 

私を諭そうとしている先生の表情には、怒りと苦悩が垣間見える。

 

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