その男、猛獣につき
「今までマヒ側の足に力が入らなくて、立つのが精いっぱいって感じだったのに。しっかり立って、更衣動作までしっかり出来たんです」

 

「それで、何に気付いた?」

 

俺の真っ直ぐに捉えた有田の瞳を、有田はしっかりと自信に満ち溢れた瞳で見つめ返し、嬉しそうに笑う。

 

「先生が歩行訓練を中心にプログラムを立てておられたのは、きっとマヒ側の下肢の支持性を高めて、立位の安定を図りたかったのかなって考察しました」

 

「それで歩行訓練を治療プログラムに追加したいと?そんなこと悩むことじゃないだろう?」

 

俺が返した言葉に、有田は少し表情を曇らせ呟く。

 

「歩行訓練だけじゃなくて、階段昇降というか階段を下りる練習を追加しようと思っているんですが…」

 


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