その男、猛獣につき

「有田!!!」

 

フロア1階分を昇った辺りから先生の低くて色気のある声が、非常階段中に響きながら降ってくる。

 

「はっ、はっ…、はい!!!」

 

動揺のせいで唇が震えて、声が上擦ってしまう。

それでもなんとか返事は先生に届いたらしい。

 

 

「少し気持ちが落ち着いたら、戻ってこい。じゃあ、先に戻るから」

 

 

ガシャリ。

 

先生が2階の非常階段からフロアに出ていった様で、重たい扉の閉まる音が聞こえてきた。

 

 

今のキスは何だったのだろう。

 

 

頭が混乱して、何にも考えられなくなり、ヘナヘナと私はその場にしゃがみこんだ。

 

 

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