その男、猛獣につき
「先生、謝らないでください」

先生の腕の中で、少しだけ先生を見上げながら訴える。



後悔なんてしてない。
むしろ、先生と気持ちが繋がって幸せで仕方ない。


「名前、二人きりの時は、名前で呼んで。」
「なんだか、恥ずかしくて…」

「さっきまで、やらしく俺の名前呼んでいたくせに」

先生が意地悪な笑顔を浮かべて私の頬を撫でる。


私はついさっきまでの出来事が頭で思い出すよりも早く、身体の芯の部分が彼の熱をはっきりと覚えていて、急速に熱を帯びていく。


「主税さんの意地悪」

少しだけ頬を膨らませて抗議すると、先生は可笑しそうに笑って、啄むような軽いキスをおでこに落とした。

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