その男、猛獣につき
私は、先生の囁きに恥ずかしさのあまり俯いてしまう。

きっと、今の私は耳たぶまで熱を帯びていて真っ赤だろう。


「ん?どうした、有田。」

「い、いえっ。なんでもないです」

出ていったはずの興梠先生が、所用でもあったようで席まで戻ってきて、私が俯いているのに気がついて声をかける。

私はなんでもないと撥ね退けたけど、先生は私をからかうような視線を送っていて、私が照れてしまったことをさぞ可笑しそうにしている。

そんな先生を見て、ちょっとだけ実習延長でもいいかな。

なんて思ってしまったことは口には出来なかった。



そういえば、あと二週間後、私たちはどうなるのだろう…。
早速、遠距離恋愛になるってことだよね。
それとも2人の関係なんてなかったことになるのかなぁ。

実習の終わりが来た時、学生と社会人という関係になる私たちが一体どうなるのか、付き合って2日目にして、私の心の中に小さな不安が生まれてしまった。

< 279 / 328 >

この作品をシェア

pagetop