その男、猛獣につき
携帯の番号知っているけれど…。

かける、かけない。
たったそれだけのことなのに、うじうじと私は悩みながら、畳にごろりと寝転がる。


「結局、恋人の前にバイザーってことだもんね」



電話をかけたところで、繋がるかなんてわからない。
電話が繋がったところで、何しているかも、何話していいかも分からないもん。


卑屈な自分は大嫌いなのに、電話をかける勇気がないだけなのに、自分にそんな言い訳をしてしまう。

不安が少しずつ広がっているのを、気付かないふりして私は目を瞑った。




連日の実習の疲れのせいで、私はそのままあっという間に深い夢の中に落ちていった。

< 281 / 328 >

この作品をシェア

pagetop