その男、猛獣につき
「それで、どうして出来てないんだ?」

得意の蛇睨みを朝一番からおみまいされたのは、翌日の金曜日のこと。




「すみません。眠ってしまいました。気が付いたら、朝で…」

「どうした有田?そんなことこの実習期間で、今日までなかっただろう。」

先生の片手には未完成のスライド資料。

口調はものすごく怒っているのに、私へ向いている先生の視線は心配と落胆が混ざったようなもので、それが私をひどく落ち込ませる。




「すみません」
小さくなりながら、頭を下げる。

「気、緩んでんじゃねぇの?終わりが見えて。ふざけんな!!」

先生の怒号がスタッフルームに響き渡る。
思わず顔をあげたら、先生は気まずそうにして私と視線を合わせてくれない。


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