その男、猛獣につき

「毎日、興梠の出した課題を必死で頑張ってること、興梠だけじゃなくて、リハビリスタッフは皆知ってる。興梠もそれを分かっていて、レポートの内容もしっかり出来ているから、実習の評定はA判定を出したいってこの間僕に言ってきた。」

「えっ、Aですか？」



信じられない。
鬼門の実習先で、しかも冷徹の興梠先生からA判定をもらえるかもしれないなんて。



「そう。だから、有田ちゃんには、興梠だって、僕だって期待している。気を抜いた訳じゃないっていうのも分かるけれど…、興梠にとっては期待していた分出来ていないのが悔しかったんだろうな。興梠の気持ちも理解して、明日からまた頑張ってほしい」

「ありがとうございます」


心からの感謝で頭を下げたのに、先生の気持ちを裏切ってしまうような行動をしてしまった自分が悔しくて、情けなくて、気がつけばぼやけていた視界がさらにぼやけて、涙が次から次へと溢れてきた。