その男、猛獣につき
「なんだか、先生の声聞いたら、安心してしまって…」

「そっか?それならいいけど…」


私の答に、少しほっとした声が電話越しに伝わってくる。
けれど、一度流れ出した涙は止まる気配がなくて、せっかくの先生との電話も先生に心配かけるばっかりのようで申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「…あの、少しだけ落ち着いたら、電話かけ直してもいいですか?」
「わかった」

一旦、落ち着かないと、せっかくの電話すらまともに話も出来ない。



そう思って、先生との電話を切るとちゃぶ台に頭を突っ伏した。

「私って、こんなに恋愛不器用だったけ」

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