その男、猛獣につき
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「じゃあ、10分後に玄関のロータリーな。遅れたら、俺帰るから」
コンビニに行くと言った私に、先生が準備のために与えてくれた時間はたったの10分だった。
女子の支度に10分だなんて……。
泣き言を呟きながらも、先生の優しさが嬉しくて、自然と頬が緩む。
私は急いで準備を始めた。
必要最低限のメイクをして、着替え。
実習に持ってきた私服は、選ぶ程の数もなく、スーツケースの一番上にあったTシャツとくるぶしまでロールアップしたデニム。
雨だし、行き先はコンビニだからと足元はサンダルを履いた。
リハビリ室の片隅にある治療用の鏡を姿見代わりに全身を映してみる。
なんだか、先生とお揃いっぽい。
少しだけ気恥ずかしいような感じ。
でも、コンビニに乗せてって貰うだけだから。
自分に言い聞かせた。
「あっ、前髪。どうしよう。」
鏡に映ったちょこんと結んだ前髪。
その存在をすっかり忘れていた私は、おおいに焦ることになってしまった。