その男、猛獣につき


「しげちゃん先生、今度の実習はどうなるんですか?」

静まりかえった教室に薫の声が響く。


「あぁ。今、検討中だ。数人だが、実習先が変更になる奴もいるかもしれん。そこは、理解して欲しい。」


さっきまで静かだった教室がまたざわついた。
明らかにみんな動揺してる。


「釜谷君の次の実習先ってどこだっけ。」
隣の薫に囁くように尋ねてみた。


「永島病院だよ。永島病院‼」


「まじ?」
私は思わず、口に手を当てた。


永島病院は、数年前から実習先になっている。噂では首席で卒業したOBがいるらしく、今まで実習に行った学生のほとんどが不合格もしくは実習延長の判定をもらっている。



私達学生の間では鬼門と呼ばれる実習先。




「まぁ、でも釜谷君の穴埋めするなら男子の誰かでしょ。あの病院の実習に女子が行ったことないみたいだし。」


「そっか。そうだよね。」
薫に言葉に私も安心していた。





「さぁ、講義始めるぞ。」
パンパンとしげちゃん先生が手を叩き、私達はその講義に意識を向けた。





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