その男、猛獣につき
心の温度が2℃程上昇した気がする。
初めて誉められたことが、ものすごく嬉しい。
そして、ちょっと心配してくれてることも嬉しい。
「やっぱり、優しいじゃん。先生。」
私は一人ほくそ笑んだ。
☆★☆
「今日は、遅れてしまって本当にすみませんでした」
車椅子バスケの帰りの車内、私は先生にもう一度頭を下げる。
「実習生の休日はそんなもんだ。むしろ毎週、車椅子バスケに参加できる余裕があるなら、レポートあと1症例増やしてもいいかもしれないな」
「えぇ…」
今でも毎日睡眠時間を削ってレポート作成しているのに、これ以上レポートが増えるなんて溜まったもんじゃない。
落胆と抗議が入り混じって、泣きそうな声をあげる。
「まぁ、冗談だ。車椅子バスケでストレス発散しろ」
先生は、運転席でそう言って笑って、私の頭をワシャワシャと撫でた。
その手は、やっぱり大きくて、暖かい魔法の手。
バイザーと実習生じゃなかったらよかったのに…
そんな思いが沸々と沸き上がってくる。