シークレットな関係
不意に、コンコンとドアをノックする音がして、俺が出ますと言ってマネージャーが応対に出た。
マネージャーの背中の向こうから、ちょっと焦った感じの声で私の名前を言ってるのが聞こえてくる。
あれは・・・あの声は。
「和哉!?」
「ああ、私が連絡したの。ももちゃん、今まで電話する余裕も時間もなかったでしょ」
そう言って、社長は彼を迎えるように立ち上がった。
口を真一文字にむすんで速足でこちらに近づいてきた彼が、社長に深々と頭を下げる。
「ご連絡ありがとうございました」
そして、マネージャーにも頭を下げた。
「桃花を助けてくださったそうで、本当にありがとうございます」
「いえいえ。でも、今日ほど、学生時代に空手をやっててよかったなあと、しみじみ思ったことないです」
照れ隠しなのかそう言って頭を掻くマネージャーに、再び頭を下げたあと彼は、「桃花と二人きりにしてください」と言った。
社長とマネージャーは顔を見合わせた後、彼に頷いて見せ、私の方を向いた。
「じゃあももちゃん、明日はお休みにしたから、ゆっくり休んで」
「はい。社長、ありがとうございました。マネージャーも、ありがとうございます。おやすみなさい」
おやすみ、と言って二人は出ていき、彼とふたりきりになる。
しんと静まり、しばらくたっても彼は何も言わない。
襲われそうになった私を、彼はどう思っているんだろう。
不注意だと叱るだろうか。
それとも・・・嫌いになっただろうか?