シークレットな関係

「これは必要ない」

「え、でも・・・どうかお願いします」

「二度は言わない」


高橋は冷たい言い方をする。

印鑑を捺して返された書類を持って、その子は項垂れてとぼとぼとデスクに戻っていった。

隣のデスクの子が慰めるように頭を撫でている。

撫でられながら「またダメだったー」と言う声は思ったよりも明るい。

当の高橋は変わらない表情で仕事をしていて、オフィス内の雰囲気も普通だ。

どうやらいつものことみたいで私も気にするのを止め、自分の仕事をこなした。


午後七時。

会議室の明かりを点けずに、窓から見える景色をぼんやりと眺める。

道の向こうにあるオフィスビルには明かりが点いていて、ブラインドの下げられていないところは人が動く様子がよく見える。

遥か下にある道路はヘッドライトの線ができていた。


会議室での待ち合わせとは、昨日を反省してのことだろうか。

カフェを出たのが、すごく慌ただしかったもの。


「あのカフェ、またいつかゆっくり行きたいな」


独りごちるのと同時にドアの開く音がして、会議室の中に明かりが射し込み背の高いシルエットが窓に映った。

ドアが閉められて暗くなり、振り向こうとしたら「そのまま動くな」と言われ、窓の外を眺めることに徹する。

オフィス用の絨毯の敷かれた床は足音を消してしまう。

どういうつもりなのか分からなくて問いかけようとしたら、後ろからすっぽりと抱きすくめられて体がビクッと跳ねた。

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