シークレットな関係
高橋は美味しそうに食べてくれて、うれしくなる。
三年くらい前、事務所に料理番組の司会のオファーが来るという話があって、そのとき暫くの間料理教室に通ったことがある。
結局その話は立ち消えになってかなりショックを受けたけれど、高橋に認めてもらえたなら、あれも無駄じゃなかったかな・・・。
「ごちそうさま」
「どういたしまして」
私が洗った食器を、高橋が布巾で拭く。
こんなふうに共同作業をしていると夫婦ってこんな感じなのかなあと思う。
「高橋はマメだね。いい旦那さまになりそう」
イジワルなのは、いただけないけど。
「俺は家事を手伝う男だ。お買い得だぞ」
「そうだね。高橋と結婚する人は幸せだね」
食器を元に戻してリビングに戻る私の腕が、グッと捕まえられた。
「櫻井は、本当にそう思うか」
「思うよ・・・どうしたの?なんか、変だよ」
眉間にシワが寄っていて、怒っているというよりも辛そうに見える。
「痛いよ、離して」
「ああ、悪い。・・・タクシー呼ぶから、また明日同じ時間な」
間もなくインターホンが鳴り、送ってやれないと謝る高橋とは玄関で分かれ、私は後味の悪い気持ちのままタクシーに乗って帰った。