シークレットな関係

話しながら歩くのは楽しい。

高橋は楽しんでくれてるかな。

三ヶ月限りの恋人契約だけど、いい思い出として残ってほしい。

私も、そうしたい。


キリンのゾーンに来ると、前方に人だかりができているのが見えた。


「宇津木晴香が来てるんだって!」

「ドラマの撮影してるみたい」

「今度は飼育委員の役らしいよ!」


みんなが口々に言いながら、前方の人だかりを目指していく。


「どうする?」

「・・・見に行く」


人だかりに近づいていくと、顔見知りの事務所スタッフを見つけた。

撮影スタッフと一緒に、集まってきた人たちに声を出さないよう注意している。


「白井さん、お久ぶりです」

「うわっ、さくらさんじゃないっすか。びっくり、デートですか?」

「うん、まあ、そんなとこ。見たいんだけど、近くに行ってもいいかな?」

「じゃあ、内緒でこっちに。彼氏さんもどうぞ」


スタッフ用に設けてある出入り口から入って、こっそり撮影スタッフに交じる。

クレーンのようなカメラが設置された向こう側では、青い作業服を着た宇津木晴香がバケツを持ってスタンバイしていた。

反対側には相手役っぽい俳優もスタンバイしている。

ピンと張り詰めた空気が漂い、撮影監督が合図すると、バケツを持って歩く宇津木晴香に俳優が走り寄っていった。

懐かしくて切なく、そして悔しい思いが胸中を占める。

人気女優と人気俳優の出演するこのドラマは、きっとヒットするんだろうな。

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