儚い愛を貴方と…
通っていた小学校の横を通り抜け、木々が鬱蒼と茂る場所へ入る。
森ではない。コンクリートの道の両脇に木が生えているだけだ。
まるで緑のトンネル。
都心と比べると、本当に東京なのだろうか、と疑いたくなるような美しい自然がここにある。
小学生の頃、授業で何度も来た場所だ。

道を真直ぐ進んで神社の前を通り過ぎる。
あと少しだ。

「…着いた」

久しぶりの運動に息を切らしながら空を見上げれば、空が桜色に染まったのではないかと思ってしまうほど満開の桜が風に揺れる。
桜並木のすぐ近くにはたくさんの菜の花が咲いていた。

黄色、桜色、空色。
春らしい明るいグラデーションに俺は暫く見とれていた。

辺りを見渡すと保育園生であろう子供達と、保母さんがいる。
あの子は…?

「……居ない、か」
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