水男(ミズオ)
「うん。いいよ」


そう言って席を立つ亜美。
高山の顔に一瞬笑顔が浮かぶ。


「さっきはごめんな。


なんだか俺
仕事を覚えるのにパニックになってて


テンション下がりまくりだったから
力仕事とかしたくなかったんだよなあ……」


高山が朝の失点を取り返そうと
必死にしゃべっているが


亜美は高山の声が
耳に入ってこなかった。


なぜか?


高山が話している後ろを
思いつめたような顔の


俊介が通ったからだ。


亜美の視線は
俊介からロックオンされて離れない。


「高山君ごめん。


ちょっと用事出来た」


そう言うと亜美は
俊介の後ろを

さりげなくついていく。


高山はその様子を黙って
見送るしかなかった。
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