水男(ミズオ)
次の瞬間


物陰から俊介の様子を見つめていた亜美は
驚くべき光景を目にしてしまった。


一体何を見たのだろうか?


涙。


あふれるような涙を
亜美は目撃したのだ。


誰の?


俊介。


屋上に来た俊介は
誰もいない屋上で


空を見上げなながら
涙を流していたのだ。


息をのむ亜美。


見てはいけないものを
見てしまったような感覚。


俊介は一筋の涙と言うものではなく
嗚咽を漏らして


激しく泣いていた。


「真理子……どこへ行ってしまったんだ!


キミなしの人生はどうしようもなく辛い。
早く戻ってきてくれ……」


絞り出すような声で
俊介は独り言を言っている。


俊介の様子を見て
亜美の心は締め付けられた。



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