ボディーガードにモノ申す!


私よりも早いペースでパスタを食べ進める清恵は、思い出したように「そういえば」と顔を上げた。


「担当変わって良かったじゃない。嫌な男だって言ってたもんね、椿」

「え?あ、あぁ……」


思わず曖昧に答えを濁す。
まさかこの短い期間で好きになり、気づいた時にはもういなかったなどとは言えない。


きっと真山は別の誰かのボディーガードをしたり、どこかの会社の警備員をしたり、忙しく働いているんだろう。
私じゃない誰かを守っているかもしれない。


「ほんと、嫌な男……」


ボソッとつぶやいてしまった。
そのつぶやきを、清恵は「そんなに嫌な奴だったんだ〜災難だったね」なんて笑っていたけれど。
そういう意味じゃない。


担当が変わる最後の最後にキスもどきをしてから去っていくなんて、どういう神経をしてるのか。
だから嫌な男だと言ったのだ。


後味の悪い思い出を記されたみたいで虚しい。
単にからかうつもりだったのかな。


私の口からはため息ばかりが漏れた。











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