たとえ声にならなくても、君への想いを叫ぶ。
 


「……樹生。今日はもう遅いから寝なさい。勉強は、明日でも出来るだろう」


「……うん、ありがとう。父さんも早く寝なよ、おやすみ」



振り向くこともせずそれだけを言えば、小さな溜息が聞こえた後、部屋の扉の閉まる音がした。


─── 2学期が終わり、高校生活最後の冬休みは受験生にとっては少しも幸せなものなんかじゃなかった。


大学の推薦が取り消しになったあと、俺は当初希望していた私立医大の受験を止め、国公立の医学部を目指すことを決めた。


その意思を、停学の明ける前日に初めて父に話した時には、俺が自分と同じ大学を目指していたことに喜びを感じていたらしい父は、なんとなくガッカリしたような表情をしていたけれど。


最終的には何も否定はせず「最後まで頑張ってみなさい」と、背中を押してくれた父に、心から感謝した。


そして、そこから改めて受験勉強を始めたのだけれど───



「……なんでだろ、」



正直、焦りばかりが募っていく。



< 413 / 475 >

この作品をシェア

pagetop