四百年の誓い
 それから数日後の夜。


 札幌に戻った美月姫の電話に、父親からの着信があった。


 (何だろう、いきなり)


 父親からの電話は極めて稀だ。


 日常生活に関する連絡は、大部分が母親からかかってくるはずなのに、今回は一体?


 「は? お見合い?」


 父親の突然の言葉を美月姫は理解できず、最初は聞き間違いかと思ったほどだ。


 「そうなんだ。ちょっと会ってみるだけでも……。時間を作ってくれないか」


 お見合いのためにまた、札幌から250キロ離れた故郷函館に戻らねばならない。


 先日夏祭りの手伝いに帰省したばかりなのに。


 「冗談でしょ」


 それより何より、いきなりのお見合い話に美月姫は戸惑いを隠せない。


 「いや。会社の上層部からの、直々のお話しで」


 父親の声からして、ふざけているわけではなさそうだ。


 「なに言ってるのお父さん。私まだ19だよ」


 「それは先方も、重々承知の上で、だ」
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