四百年の誓い
 「お母様は今……」


 「市内の総合病院の個室に入院中」


 「お見舞いには?」


 「さっき顔を出してきた。あまり俺が病院をウロウロすると、騒ぎになりかねないので、あとは任せるようにと水上に言われた」


 与党幹事長の愛人が、自殺未遂。


 以前ならマスコミを黙らせる力を丸山は有していたが、その頃の権力に翳りが見えている今、騒ぎを広めるわけには行かない。


 それを水上も察しているので、優雅には帰宅するように告げたらしい。


 「一人になるのも怖くて、吉野先生に今までのお詫びをして、それから話を聞いてもらいたくて母校に顔を出したんだ。だけど先生はちょうどさっき、出かけたばかりで」


 「私もさっきまで先生に会いに来ていたんだけど、午後から部活の引率で出かけて行っちゃった」


 「でもその代わりに、大村さんに会えてよかった。まさかここで再会できるなんて、夢にも思ってなかったから」


 「私も」
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