四百年の誓い
 優雅に会いたい。


 でも会うことはなかなか叶わない状況。


 声だけでも聞きたい。


 声を聞いてしまえば、会いたくなってしまう。


 会ってしまえばずっと離れられなくなりそうで怖い……。


 想いを貫こうとすれば、その罰としてどんな未来が待ち受けているか。


 全てを失くしてもなお、優雅のそばにいたいと願い続けることはできるだろうか。


 ……そんな堂々巡りをしながら、夏の風に吹かれていた。


 ある真夏の昼下がり。


 買い物に出た際、陽射しを避けて街路樹の日陰を選んで歩いていた。


 気温は30度にわずかに及ばないものの、それでも十分な暑さだった。


 そんな時、バッグのポケットに差し込んである携帯電話が、着信を告げているのに気がついた。


 マナーモードで音は消してあるが、ランプが点滅している。


 ディスプレイを確認すると、優雅からだった。


 「あ、美月姫? 今大丈夫?」


 「うん……」


 優雅の声には、明らかに焦りの色がちらついていた。


 「周りに誰かいる?」


 「いや、一人だけど。どうしたの?」


 「この電話、誰にも聞かれていない? 大丈夫?」


 「全然大丈夫だけど。本当にどうしたの?」


 優雅の異様な雰囲気に、美月姫は不吉な予感を覚えた。


 「……今晩、迎えに行くから」


 「え?」


 「一緒に逃げてくれないか」
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