四百年の誓い
 「何とか時間を作って、絶対に会いに行くから、待っていてね」


 以前なら電話の向こうのその言葉を聞いただけで、嬉しくてたまらなくなりはしゃいだものだけど、


 「……無理しないでね」


 静かにそう答えることしかできなかった。


 「会えない間に、心変わりしないでね」


 「まさか、私が」


 ……変わりすることはあり得ない。


 しかし自分の思いとは程遠い力で、気持ちがねじ曲げられようとしている。


 「信じてるから」


 「……」


 優雅のその言葉も、今の美月姫には胸が痛い。


 少しずつ優雅とは距離を設けていって、いずれは京と結婚しなければならない。


 それは自然な成り行きを装わなくてはならないので、優雅に打ち明けることができない……。


 「仕事が片付いたら、すぐに美月姫に会いに行くから。予定がはっきりしたらまた連絡する」


 「ありがとう……」


 やがて電話を切った。


 この夜は優雅は北陸に滞在しており、二人の間には千キロ近い隔たりがあった。


 にもかかわらず空には、同じ月が輝いている。


 今夜は13日目の月。


 もうすぐ満月だ。
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