四百年の誓い
 美月姫と婚約関係にある深山京は、定期的に美月姫の元を訪れる。


 ただ顔を見て近況確認の会話をしながら食事をし、ほとんどがその日のうちに東京に戻ってしまう。


 あれ以来彼は、美月姫に指一本触れない。


 「また変な奴が現れたらまずいからな」


 「変な奴?」


 「フクヤマ フユサト」


 「……」


 いつぞやのログハウスに突然現れ、日本刀を京の喉元に押し付けたという和装の男だ。


 しかも優雅に瓜二つの。


 それ以来、京は一日たりとも忘れたことがないようで……。


 「ちょっと気になったから、ネットで検索してみた」


 「フクヤマ、フユサトをですか?」


 「ああ。山ほど出てきたよ。福山城の月光姫伝説の、お相手の若君。……姫を巡って当主である兄に処刑された、あの弟と同姓同名だったな」


 もちろん美月姫も、月光姫伝説は知っている。


 地元では有名な話だったし、高校時代に歴史の授業中、日本史担当の吉野圭介から何度もあらすじは聞かされた。
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