四百年の誓い
 それから携帯を買いなおすまでの間、優雅は毎日病院の公衆電話から電話をしてきた。


 「もうちょっと入院が長引くんなら、パソコンも調達したんだけどね」


 優雅は丸山幹事長と同じ病院に入院中。


 傷も深手ではなかったし、入院直後に体調を崩したもののすでに回復しているため、退院は間もなくだった。


 「退院したら、すぐに美月姫に会いたい。でも幹事長の問題もあるし、母さんから目が離せないのもある」


 「……」


 優雅の母・紫は以前から精神的に不安定だったのが、今回の一件でさらに動揺が激しい様子。


 幹事長と優雅が相次いで襲われ、血を流す現場に居合わせてしまったゆえ、ショックを受けるのも当然なのだが。


 「母さんを支えてやれるのは、俺しかいないんだ」


 これまで母一人子一人で生きてきた。


 子育てに興味がなく、自分のことだけに夢中だった紫ではあるが、心の奥では息子に依存していた。


 「いずれ母さんの見舞いに帰省するから、その時美月姫とも会いたい」


 「うん。予定空けておくから」


 美月姫は、全ての事態が落ち着くまで待とうと心に決めた。
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