四百年の誓い
 だけど、美月姫はこうも考える。


 散り始めたその瞬間から、来年の開花へ向けての準備が、桜の木の中では始まっているはず。


 散りゆく花の美しさを堪能した後は、夏の寂しい葉桜、秋の紅葉を愛でて冬ごもり。


 そして……再び春が来る。


 薄墨色、薄紅色、桃色、淡いピンク。


 彩られた木々が左右から美月姫を包み込んでいた。


 柔らかな風に導かれて。


 ……その時背後から、誰かが枯れ木を踏みしめる音が聞こえた。


 美月姫は振り返る。


 「優雅くん!」


 突然現れた愛しい人の姿を目に留めた瞬間、美月姫は安堵した。


 「驚かそうと思ったのに」


 優雅はいたずらっぽく笑った。


 東京から帰省した優雅と、美月姫はこの桜並木で待ち合わせをしていた。


 年明け以来、優雅は何かと忙しくて春休み中の帰省はかなわず。


 ようやくここに来られたのは、連休の今になってしまった。


 「会いたかった」


 優雅は美月姫を抱き寄せた。


 「もう離さないから」
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