四百年の誓い
 「……」


 並んで記された二人の名前を見ると、感慨深いものがあった。


 遠い昔に自らの手で引き裂いた二人が今こうして結ばれ、幸せに暮らしているのを確認するたびに、安らかな気持ちに満たされる。


 かつて愛した女の面影を宿す美月姫への想いに惑わされることなく、彼女のためを思い突き放したのは正解だったと安堵する。


 偶然この二人の担任を務めたのは、もう随分昔になる。


 福山冬悟と月光姫が同時に甦ってきたようで、当時は衝撃を受けたものだ。


 そして彼らは二人とも優秀で、かつ印象深い生徒だった。


 卒業後は一時、周囲の事情に巻き込まれて別々の人生を歩み始めたものの、やがて二人はまた巡り会い、共に生きる道を選んだ。


 一つの住所と同じ名字を眺めながら、圭介はふと振り返る。


 郵便物を抱えて部屋に戻り、封を開いた。


 彼らの住む地域の、ミニコミ誌が数冊同封されていた。


 取材を受けたらしい。


 窯の前で自作品の完成目指して奮闘している優雅の姿が、カラー写真で掲載されている。


 その脇にエプロン姿の美月姫も写っている。
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