四百年の誓い
 北海道札幌市の東隣に位置する、江別市(えべつし)。


 ここはレンガ造りが盛んで、それに伴い窯業、陶芸なども活発だ。


 二人は今、江別市の街外れに居を構えている。


 自宅に優雅は、念願の窯を設置した。


 最初は趣味のためだったが、やがて趣味の域を越えてきてカルチャーセンターで講師をしたり、大学の非常勤講師などをして指導も行なっている。


 近年は各種コンクールにも出展。


 若手有望陶芸家としての知名度も上昇中だった。


 せっかく東大を卒業したのに、一流企業に就職せずもったいなくないか、と圭介は卒業時に優雅に告げた。


 だが彼は「これからは、好きなことをして生きていきたい」とだけ答えた。


 一流企業への就職やキャリアになることに対して、全く関心がないらしい。


 苦労せず東大にも入ったわけだから、ありがたみも感じていないようだが。


 「だけど先生、陶芸もすごく頭を使うんだよ」


 上薬の塗り具合や加熱のタイミングなど、色々難しい。


 しかし優雅はそれらの工程、成功例と失敗例をきちんと記憶しておくことができたので上達が早かった。
< 356 / 395 >

この作品をシェア

pagetop