四百年の誓い
 一方圭介も、未だに胸が疼いていた。


 自分の前世と犯した罪を知ってしまい、美月姫の真の幸せは自分ではないことを悟り、身を引いた。


 嫌いになって離れたわけではない。


 想いは消せずにいた。


 だが前世で自分が不幸にした月光姫(げっこうき)の悲しみを思い起こし、その贖罪の意を込めて、決して美月姫に触れるまいと胸に誓っていた。


 とはいえ会うたびに美しくなっていく美月姫を黙って見守るのは、誓いとはいえ苦しかった。


 (いつになれば解放されるのだろう)


 それがかつて犯した罪の報いとはいえ、無間地獄の苦しみのようだった。


 「……この前、清水の母親に連絡を入れてみた」


 「!」


 清水優雅の名を出すと、美月姫の表情がこわばる
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