四百年の誓い
 「そ、そうですか。何か反応はありましたか?」


 美月姫は動揺を抑えながら、圭介に聞き返した。


 「いや、いつも通りだ」


 「……」


 先日、新学期恒例の飲み会の二次会を、優雅の母親が経営する高級スナック「夕映霞(ゆうばえかすみ)」にて開催した。


 その合間に圭介は、優雅の母・紫(むらさき)と話をした。


 「あの子は、今の生活を維持するのに精一杯なのよ」


 卒業後一度も、故郷には帰省していないらしい。


 やはり過去を断ち切るため?


 「では、またいつもの伝言を……」


 「先生もほんと、飽きませんわね」


 紫の携帯に、優雅宛のメッセージを送信した。


 「何度転送しても、あの子は無反応だというのに」


 それでもいい。


 いつか奴はきっと、心を動かしてくれる。


 その信念に一縷の望みを抱いて、圭介はメール送信を続けた。


 相変わらず美しい、優雅の母親・紫。


 最近ますます痩せてきた。


 どこか悪いのではと、圭介は気になっていた。
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