四百年の誓い
 昨日の早朝、優雅との逢瀬の後、想定外の事態に見舞われた。


 いつまでも隠し通せないとは心のどこかでは解っていたのだけど、それに直面してみるとやはり恐怖と不安で体が震えた。


 (興信所……)


 いつからか優雅と会うたびに、探偵に尾行されていたらしい。


 全く気づいていなかった。


 それゆえ札幌では人目を気にせず、公衆の面前で手を繋いだり。


 時にはキスをしたり抱き合ったり。


 しかも美月姫自身の素性まで調べられているようで。


 (両親には迷惑はかけたくない……)


 影響がどこまで広がるものか、考えただけで憂鬱だった。


 与党幹事長・丸山乱雪の権力。


 地元函館では、絶対君主のような権限を有するという。


 北海道知事や函館市長でさえも、丸山乱雪の前では赤子同然。


 そう聞いてはいたけれど、美月姫は今一つイメージできずにいた。


 美月姫が知る、丸山乱雪。


 かつて一度、中華料理店で遭遇したことがある。


 圧倒的なカリスマ性。


 「支配する側」「される側」の両極の存在を思い知らされたものだった。
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