二人の穏やかな日常
「あのさ富井くん」
「何?百合ちゃん」
「たしかにお友だちになるとは言ったんですが」
「友達なんだからタメ口で良いし、俺のことも下の名前で呼んでほしいな」
その日の放課後、当たり前のように私の教室までやって来た富井くんは、私の机に肘をついて私をじっと見つめる。気味が悪い程の笑顔で。
あと近い。そしてなんてさりげなく手を握ってくるんだろうか。
「たしかにお友だちになるとは言ったけど、毎休み時間来るのはどうかと思うし、友達は話し合うとき手握ってこないと思うんだよね。下の名前で呼ぶのは遠慮するね」
私も笑顔で、そっと富井くんの手をはらった。
「そう?」
「そう。あとついでに言うと、私そろそろ帰りたいんだよね」
教室に残っているクラスメートも、ほんの数人。
ちっちやホーリーは、当然のようにさっさと帰ってしまった。
ていうかちっちはまだしもホーリーはあれだけ富井くん批判していたわりにはこういうとき救ってくれないのか。
「じゃあ一緒に帰ろうか」
「え」
思わず顔が引きつる。
富井くんはそんなことでめげないというかまず気にしないらしい。
「友達だしねっ」
「……友達、だしね」
やばい友達やめたい。