二人の穏やかな日常
次の日、朝はやっぱりまだ沙紀の中で絶交が続いていたらしく、沙紀は一度も修一さんの顔を見なかった。
幼稚園から帰ってきて、修一さんも帰ってきて、やっぱりまだ絶交中。
晩御飯ができていつもと同じように食卓につくと、なぜか二人は仲直りしていた。
いやもともと修一さんが沙紀に一方的に怒られてただけだけど。
どういう風の吹き回し……。
私が晩御飯つくってる間に一体化何が?
「沙紀、なんでパパと仲直りしてあげたの?」
聞くと、横で修一さんがピクリと反応した気がしたけど、修一さんが何か言うより前に沙紀が嬉しそうに答えてくれた。
「あのね、ママ以外の女の人とチューしたことあっても、ママとのチューが一番幸せだって」
「沙紀!しーっ!」
「もう他の人と一生できないくらい幸せだって」
「……内緒って約束したのに」
ニコニコ笑顔で教えてくれる沙紀と、隣で拗ねる修一さん。
私が餃子つくってる間にそんなやり取りが……。
「だからママ以外には言わないよ?」
「いやいやママに言われるのが一番恥ずかしいんだってば……」
……やばい。ちょっと、いや、かなり嬉しい。
嬉しすぎて、危うく泣きそうになる。
「だからママも、パパのこと許してあげてね」
今度は隼人が、そう言って上目遣いで私を見つめた。
ああ、私は、愛されてるなあ。
修一さんにも、沙紀にも、隼人にも。
「ママ何にやけてるのー?」
「ちょっとね、幸せすぎて」
