Office Love
「天然ってわけじゃないんですけど、ちょっと鈍感なとこがあって。その上、必死になったら、周り見えないんですよ。」

あー良かった。ほんま、ホッとしたわ。

「僕、見込みあるんかな?」
「どうでしょう。」
「今まで、付き合うた人おるん?」

って、この年でおらんのもおかしいけど。

「いたと思いますよ。大学の時とか。入社してからは、どうかなぁ・・・」
「彩葉ちゃん、大学ん時からの知り合いなん?」
「えぇ、先輩後輩ってやつです。サークルが一緒でした。」


確か彩葉ちゃんは入社4年目、ってことは美咲ちゃんは3年目か。
3年は男の影なかったってことなん?


「市埼さん、九条を本気で落とそうと思ってるんですか?」
市埼さんなら九条じゃなくてもたくさんいるのに。

そう付け加えられて改めて、美咲ちゃんに必死になってる自分に気付く。

「僕な、こう見えて、自分からはいかへんのやで。」

その意味がわからず、彩葉ちゃんは小首を傾げる。


「寄ってくる女の子で気に入った子にしか手出してへんし。」


ギュッと彩葉ちゃんの眉間に皺が寄ったんはちょっと置いといて、


「その僕が、初めて僕の方から追い掛けてるねん。本気しかないと思わへん?」


その言葉に眉間の皺はちょっとは緩うなったけど、怪訝そうな顔は未だ崩れてない。


「私、九条が泣かされるのは見たくないですし、遊ばれるのも嫌です。市埼さんが本気だってわかったら、いくらでも協力しますよ。」


彼女の本気が見えた様な気がする。




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