Office Love
「どうしたの?」
「ん?幸せやな思て。こんな聖なる日にお前と一緒に居れるやて、最近まで思ってもみーひんかったからな。」
「私も。貴方は手の届かない人だと思ってたから・・・」
お腹空いたでしょ?


そう言いながら俺の腕から簡単に擦り抜けるお前に、軽く嫉妬心が芽生える。
こんなにもお前を欲してるんは俺だけなんか?て。


リビングのソファに腰を掛け、コーヒーを運んでくる彩葉に声を掛ける。


「俺、めっちゃ腹減ってんねやけど?」
「わかってる。ちょっとだけ待って。」


寝室から部屋着に着替えて来たお前は、いつもよりかなり幼く見え、白いエプロンが何やらエロチック。
キッチンに入ったお前は忙しなく、動いとる。
もしかして今日のために、俺のために料理作ってくれるんか?
そない思たら、めっちゃ嬉しなって、そっとキッチンのおるお前を後ろから抱き締めた。


「真子さん・・・///」
「俺のため?」
「もちろん。」


そっと彩葉の首筋に顔を埋め、彩葉の香りを堪能する。


「すぐ出来るから。向こうで待ってて。」


彩葉にそう促され、俺は仕方なくリビングへ戻る。
と、テーブルに並べられる豪華な食事の面々。
オードブルからメインまで、どこぞのフランス料理かってくらいの皿がここ狭しと並べられた。


「彩葉・・・これ、凄いな。」
「料理にはね、ちょっと自信があるんだ。」
だから、今日はウチで食べて貰いたかったの。


そない俯きながら顔真っ赤にして言うお前に俺はヤられっ放しや。
彩葉が作った料理はどれもこれも美味しいて、あっちゅう間に俺の胃袋ん中、納まってしもた。


「ごちそうさん。ほんま美味しかったわ。彩葉、ええ嫁さんになるな。」
「え・・・・・」


嬉しそうな顔と、ちょっと寂しそうな顔が交差した彩葉の表情に俺は今しかないなと思った。
俺の今の言葉は彩葉には喜でもあり、哀でもあったんやと思う。
他人事の様に話した俺には、それなりの思惑もあったから。


「彩葉・・・・・」


名前呼んで、左手を取る。
薬指にそっと嵌めるプラチナのリング。
そのリングの先には光るダイアモンド。


「えっ?」


みるみる内に彩葉の目には涙が溜っていって、これは是なんか?はたまた否なんか?
もちろん、是の嬉の涙やとは思ってても、そのお前の口から答えを聞きたい。


「今すぐにとは言わへん。まだ付きおうて日も浅いしな。けど、俺の本気を彩葉には知っといて欲しかってん。」
「ありがと・・・・嬉しい・・・・」


流れ出した涙は嬉の涙。
ゆっくり俺の指で絡め取ったら、しっかりその手を握り返して来た。


「ずっと、傍に居させてね・・・・・」


そない可愛ええこと言うてたら、必死で保ってる理性も吹っ飛ぶ言うねん。
料理の後は彩葉も頂いとこか。



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