Office Love
section 2
真子のアシスタントをしてる子を狙ってたわけじゃない。
可愛いと評判は聞いてたが、どうせ真子の手が付いてるだろうと、気にも留めてなかった。
真子に用事で一課に足を運んだ時に目にした七瀬。
真子と話す様子はまるで部下と上司。
そこに何も恋愛が絡んでないのは一目瞭然で。
それが俺の欲に火を着けた。

「七瀬、これも一緒に頼めるか?」
「はい、ついで、ですので。」

何かにつけ、七瀬に声を掛けるようにしてみたものの、全く脈のない気配に少々焦り気味。
真子に気があるのか?それとも俺に興味がないのか?
事の真相は、本人に試してみねぇとわからねぇ。


***


日曜出勤してると聞きつけ、社へ急ぐ。
あと、ちょっとってとこで、真子に持っていかれた。
まぁ、初めっから俺には気がなかったってことか。

日曜日に結構気合い入れて出て来たのに、玉砕して終わりかよ、と自笑しながらエントランスに入れば、二課の貴井の姿が見えた。
貴井は仕事も良く出来、冷静沈着、後輩達に有無を言わさない物言いが、まさしく鉄の女と言う言葉が似合う女だった。


咄嗟に俺は、

「貴井」

と声を掛けてた。

「あぁ、佐々木さん。」

と、近づいてくる貴井。
いつもと違って見えるのは、貴井の私服姿がそう感じさせるのか?


長い茶色の髪は下ろされ綺麗にカールされてる。
スーツではない、着こなし抜群のスタイルに、いつもの貴井の面影はない。
鉄の女と言われる貴井はこんな女なんだろうか?
ジッと見つめる俺を不審に思ったのか、

「どうしたんですか?日曜出勤ですか?」
「いや、ちょっと用事で来ただけだ。貴井は?」


綺麗に見せられたデコルテに釘付けになりながら、聞く。


「社に忘れ物をして。明日までに最終チェック入れなきゃいけなかったのに。」


と、申し訳なさそうに答える。

「それ、俺が頼んだ今度のコンペの資料?」
「はい、そうです。粗方出来上がったんですが、最終チェックを忘れていて。」


【なら、それは明日でいいから、今から付き合え。】


そう貴井に耳元で囁き、腕を取った。




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