ゾッとするホラー短編集
「あと二階と一階を見れば

終わりね。




早いとこ見て、もう帰りましょ。




この病院、

やっぱり気味が悪いもの」






恵子が消え入るような小声で、

みんなにそう言った。






「恵子、あとちょっとだよ。




幽霊なんて、本当はいないよ。




そんなことくらい、

恵子だってわかるだろ?」






拓海がそう言い終わったとき、

病院内に響くような

女の悲鳴が聞こえてきて、

私たち四人は、

その場で立ち止まった。






私はこの助けを求めて

いるような悲鳴に、

心臓が止まってしまうかと

思うくらいに驚き、

呼吸が乱れ、

冷たい汗が流れた。






私たち四人は、

きっと同時に、

同じことを思ったに

違いなかった。






誰もいるはずのない

廃墟の病院の中に

私たち以外の誰かがいる……。
< 26 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop