不器用な愛を刻む
「…椿ちゃん…我慢しなくていいんだ。
…泣いても いいんだよ。」
「っ……喜一、さ……!」
抱き締めてくれる喜一の
その優しい温もりに
椿は堰を切ったように
嗚咽しながら涙を流した。
──彼をこんな目に合わせたのは、自分のせいだ。
自分が、善のところにいたから。
自分が、敵に捕まったから。
自分が、自分で身を守れなかったから。
あの日、もし自分が
彼の帰りを待っていなかったら
敵に捕まらなかったかもしれない。
あの日、もし自分がちゃんと
無理する彼を止めていたら
銃弾を受けていたのは
彼じゃなく自分だったかもしれない。
──あの日、もし自分が体を伏せて
敵の銃弾を避けていたら
彼は今頃……こうして生死を
彷徨うことはなかったかもしれない。
(-----っ、私が彼のそばにいたから…!)
彼の弱みになり
結果的に…大怪我を負わせ
命を落とさせようとしている。
「……っ…彼の、邪魔になってしまったんです…。」
「……きっと善はそんな風に思ってないよ。」
「でも、私は善様の弱みなってしまったんです…!」
そしてあの夜
彼をあの場に呼び出す道具になってしまった。
(──────いけない。)
このまま
彼が目を覚ました後も自分がいたら
また同じ目に合うかもしれない。
もしかするとまた
いや次こそ
命が助からないかもしれない───。
「……喜一さん…。」
椿は
静かに、そしてゆっくり息を吸って
覚悟を決める。
「…………椿ちゃん…?」
喜一は
何かを決心した様子の
椿のその声色に
嫌な予感がして
少しだけ
体を離した。
「……私は、善様のもとを離れます。」
そう言った彼女の声に
喜一は思わず
目を見開いた。
───彼の予感が、当たった。