不器用な愛を刻む
(景次さん、ここの息子さんだったんだ…。)
椿は景次が名乗った時に
そう言ってたのを聞いていて
少し驚きながら
彼を見上げる。
景次はそんな椿の視線を気にせず
次にヒョイッと視線を
店内の方へ移した。
「…あれ、何か女の客が多いな…。
………お?あの人も新入りか?」
「あ…その方は…!」
景次の視線の先には
もちろん、善の姿。
椿が景次の言葉に
本人の代わりに紹介をする。
「あの方は善様と申しまして、
私の……し、知り合いなんです。」
「あ、そうなのか!」
何と言って良いのかわからず、
一応 "知り合い" と言って通すと
景次はそれに特に引っかかる様子もなく
すんなりと受け入れてくれた。
「何か家族が増えたみたいで楽しいな。
ま、何かわかんねぇことあったら
遠慮なく俺にも聞いてな!」
「あ…はい!
ありがとうございます!」
景次の優しい言葉に
椿は嬉しさを覚えて
笑顔でそう返す。
景次もそれにつられて
笑顔を浮かべていると───
───グイッ!
「ひゃ……!?」
「!」
突然、椿の体が
後ろの方へと引かれた。