不器用な愛を刻む
椿が少々困惑している間に
善は奥から
仕事の邪魔にならないようにと
掛けておいた
自分の羽織りを持ってくる。
そしてバサッとそれを肩に掛けて
「……行くぞ。」
「あ、はい…。」
善はたった一言そう言って
椿を連れて外へで行く。
そんな2人の姿を
厨房の暖簾から少し顔を出して
後ろ姿を眺めていた景次。
(……椿さん大丈夫かな…。)
第三者からも見て取れる
善の冷たい態度に
景次は心配そうに そう思っていた。
(…俺に睨みきかせてたから
てっきり椿さんを好きなもんだと思ってたのに…。)
それであんな冷たい態度はねェわ…、と
景次は考えながら
厨房の中へと体を戻す。
(もし明日…
椿さん落ち込んでたらどうすっかな…。)
何か励ませるような
食べ物とか何かあったかな…と
景次は親切精神で
色々と頭を悩ませる───。