不器用な愛を刻む








(善様……やっぱり何か引っかかっている感じがする。)







風呂へ向かった善を思い出し

椿はそんなことを思う。






女性客に慣れていない…とは言っていたが


今日の接客を見ていた限り
そんな様子は全くない気がした。





むしろ楽しそうな会話をしていたようにも見えて

自分がモヤモヤしていたことを
椿は思い出す。







両思いになった、とは思っているけれど



だからと言って
これと変わったことはないし


彼の気まぐれのようにも思えるし

いつ気が変わってもおかしくはない。







もしかすると自分に愛想が尽きたのか?




そんなところにまで考えが入ってしまうが

椿はなるべくそんなことは
考えないようにしようと

頭を切り替える。









(……やっぱり私が何かしたのかも。)









厨房にいてばかりで

店内の接客を任せすぎたのか?





それとも集中している時に
名前を呼ばれたりして

それに気づかなかったとか?







改めて椿は

自分の今日の様子を
深く思い出しながら


何か至らない点がなかったか

必死に思い出そうとする。











───しかし









(……うーん、分からない…。)









結局




何も分からないまま

その晩を過ごし、
次の日になってしまった。








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