不器用な愛を刻む








「っ、いや、あの…!
ちょっと目にゴミが入って痛くて…!」

「………。」









慌てて笑顔を作りながら

目をこする椿を見て





景次は何かを決めたように
彼女の腕を取る。









「っ、え……!?」









景次の突然の行動に
椿も混乱するが




そのまま腕を引っ張られて

店内の方へと連れてこられた。










「………!」










突然2人で店内の方へと
回ってきたのを

善は見逃さず。






女性客らと話しながら




視線をこちらに向けて

少々驚いた顔をした。









(……何であの小僧と
あいつが腕とって入ってきてんだ…?)









そう思いながら

無意識に眉間にしわを寄せ、
嫌悪のオーラを出す善。





それを女性客らも感じ取って


動揺するように
「ぜ、善さん…?」と声をかける。







しかし

そんな声は彼には聞こえていない。













「け、景次さん?一体何を…!」

「いいから、静かに。」









そう言った景次は


あまり店内でも目立たない
カウンターの端の奥へと行き、





わざと善の視界に入るような


微妙な立ち位置に
椿と向かい合わせに並んだ。











一体これから何をしようとしているのか。










椿はわからず

黙って景次を見上げていると…










「…椿さん、少し顔近づけるが
黙ってていてくれよ?」

「…えっ…?」










静かにそう言われ


肩に手を置かれたと思ったら───










「っ…!?」

「───!!」









景次は顔を少し斜めに傾げて




そのまま

椿に顔を近づけた。









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