不器用な愛を刻む








───ザシュッ!!







「ぐぅあっ---!!」













……あれから、数年後。














グロテスクな人の斬れる音と

飛び散る返り血。





大柄の男がその場に倒れるのを見ながら

刀を持った若い男は
黙ってその前に立っていた。




そして目の前で倒れた男を目にして

ただ静かに---刀を鞘に収める。









(-------まただ。)









倒れる死体の目の前で
冷酷に視線を下すその男は


そう思いながら、
ただジッと…目の前の光景を 目に映す。







目の前の"ソレ"を見るたび

男は自分の中で
どうしようもない黒い渦が生まれることに

ひたすら苦しみを持っていた。






…何をしても満たされない"何か"が




モヤモヤと心の中で黒い渦になって

自分の体を縛り付ける。









「あ、また1人で殺したの?善。」









そんな心情に支配されていた時に


ちょうど後ろから
仲間に声をかけられて


そこでようやくハッとした男は

後ろへ振り返る。










「厄介な相手だって皆が頭抱えてたのに…
こんな簡単に片付けちゃうなんてね。」

「……たまたまだろ。」








同じ職業に就いておりながら

彼とは雰囲気の全く違う
爽やかな男。




その彼の言葉に


善と呼ばれた男は
フッと軽く 笑みを浮かべるだけだった。








「君の実力だよ。
俺じゃ、たまたまでもこうはいかないからね。」

「謙遜するな喜一。
そんなんやってみねェと
分からないもんだぜ?」








善はそう言って

喜一と呼んだ男に笑みを送ると




彼もまたそれに返すように

爽やかな笑みを浮かべた。












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