不器用な愛を刻む
改革が起こってまだ数年の頃。
警察に入隊して4年目の善と喜一は
まだまだ下っ端の他の同期とは違い
かつての上司をも追い越す勢いで
地位を上げていた。
それ故、こうして
厄介な罪人の担当になることもしばしばで
その時は必ず
2人で行動することになっていた。
だが
そんな喜一でも、
善とは格段に力の差があった。
善の力と素早さは
人の域を超えているように思えるほど
尋常ではなかったのだ。
「…帰ろうか。」
喜一の声に頷いて
2人は喜一の連れてきた他の人員に
後処理を任せて
静かに役所へと戻った。
(……消えない。)
その間
善は自分の中にある
あの黒い渦が
まだ自分の体に残って
消えない感覚に嫌悪を覚えていた。
───1人でいるわけではないのに、独りな感じがする。
この何とも言えない
不安と
虚無感と
苦しみ。
人を斬るたびに
その屍を見るたびに
その渦は、広さを増していく。
この渦こそが
彼の"孤独"だった。